投稿

御神楽岳 つばくろ尾根

イメージ
御神楽岳は、緑色凝灰岩のゴルジュの造形美、楚々とした白いスラブ群、まさしく大和撫子の如き山である。しかしミカグラは決して奥ゆかしい美しさばかりではない。冬期の豪雪は相当に厳しく、白無垢を纏ったミカグラ東面の姿は拝むことさえなかなか叶わない。 御神楽岳地形図を見ると東面に伸びる3本の尾根に目がつく。山伏尾根、水晶尾根、つばくろ尾根である。冬期においては山伏尾根や水晶尾根は登られているようであるが、つばくろ尾根の登行記録は見聞きしない。御神楽東面の中でも最深部に位置しているつばくろ尾根は、冬にはほとんど手付かずで、登山者にとって高嶺の花のような尾根であると言える。 本名から霧来沢の林道を歩く。時折、沢床までまっしぐらの片斜面となっており気が抜けない。小鍋又沢出合辺りからは歩きやすい林道となる。作業道を辿り古滝尾根に取りついて、1091のジャンクションピークまで歩くと東面の姿が露になる。白妙のミカグラが目映い。山伏、水晶、つばくろ、すべての尾根が純然たる雪稜で広谷川へと切れ落ちている。高揚する気持ちも束の間、一見して厳しい風貌をしたつばくろ尾根の姿を見てたじろぐ気持ちは隠せない。広谷川への下降を予定していた尾根も容易には降りられなさそうだ。出たとこ勝負で雪が繋がっていることを祈りながら、手探りで沢を下降する。 広谷川の底は雪で完全に埋もれて不気味なほど静かだ。つばくろ尾根末端は藪が繁る。ロープを結んで藪の歓迎を受ける。部分的に傾斜のある木登りを4Pほどでスッキリめの稜上に出る。御神楽沢奥壁のパノラマを堪能しながら、雪庇がデロデロと張り出したリッジを登って行く。純粋な雪のリッジかと思いきや、所々に雪に隠された小さな岩場があり気が抜けない。高度を上げていくと尾根上の雪庇の張り出しも多くなってくる。スコップを振るいキノコを崩しながら忠実に尾根を辿る。尾根上部に見えていた稲妻形雪壁がつばくろ尾根の核心部であろう。5mほどの小岩を登り急藪雪壁のひと登りは雪の状態によっては苦労するポイントだ。軟雪と堅雪の不協和音に苦しめられながらスコップを振り回す。稲妻形雪壁を登りきると、一息つける1041の平坦地となり幕営地に最適だ。ここからやさしめの雪壁登りをして尾根を目指すが、登山道合流点まではクラックや雪庇が多く意外にも登り辛い。合流点から山頂まではすぐそこだ。 本名御神楽から1091のジャ...

苧巻岳

イメージ
双耳峰といえばどこの山を思い浮かべるだろうか。鹿島槍ヶ岳や谷川岳、燧ヶ岳などの一級品の山々だろうか。もしくは、二岐山や筑波山のような里に近い山だろうか。海谷の阿彌陀山や赤沢岳西尾根Ⅲ峰などと答えたならば、偏屈な登山者に違いない。いずれにせよ双耳峰とは、そのシルエットがキュートでチャーミングな存在である。 さて、只見町にあるシンボリックな山といえば蒲生岳であろう。町からよく見える鋭峰で「会津のマッターホルン」などと呼ばれ、その人気度が窺える。では苧巻岳はどうだろうか。苧巻岳もまた、小さいながらも町からよく見える双耳峰で、目にする機会が少なくないはずだ。4歳町民は「ネコ山」、元歯科業界町民は「ムシバ山」、ある町民はゴリラの横顔に見えることから「ゴリラ山」、はたまた私は「ラクダのコブ」。様々な愛称で呼ばれている苧巻岳は、実は只見町における隠れ人気里山なのかもしれない。 苧巻岳の北東に伸びる尾根に国道252から適当にとりつく。尾根に上がると、小戸沢や只見の街並みがよく見える。キタゴヨウの細めの尾根は小さなギャップはあるものの快適に登れる。南東から伸びてくる尾根との合流点から少し歩くと、一つ目のコブの基部につく。割合、急傾斜の藪岩でスッキリしない風貌をしている。しかし私好みの味付けだ。少し上の木からは古のトラロープが垂れている。こんなところ夏にフラりと登るのは御免だ。ロープを結び登るとしよう。ブッシュが豊富でプロテクションには困らない。木登り1Pの後、ひと登りで一つ目のコブに乗り上げる。あとは冴えない雪稜を味わいながら登っていくと苧巻岳山頂だ。偏屈な登山者の皆様も、鹿島槍や谷川の一級品の山とはひと味もふた味も、あるいは料理そのものが違う只見の双耳峰を味わってみるのはいかがだろうか。 柴倉山と只見ダム 北東尾根 1峰 木登り キタゴヨウ林 1峰上部 冴えない雪稜 鞍部 2峰 ブッシュ  

志津倉山

イメージ
志津倉山は美しいブナ林をお手軽に楽しめる親しみやすい山である。伝承や巨木、岩壁など見所も多く、新緑や紅葉も逸品だ。山遊びとしても、ハイキングに沢登り、岩登りに山スキーと多彩に楽しめ、実は氷も楽しめる。会津の山岳会の志津倉山氷瀑の記録には「しょぼい!」「しょん○ん氷だ!」などと記載があり、実に好ましい。たとえどんな氷だったとしても、季節やルート、遊び方を変えて何度も同じ山に足を運ぶことで、山登りに深みが増すことは自明の理である。 しょん○ん氷を登るべく、入間方の除雪終点より林道を歩く。ラッセルが深いと登山口まで苦労するのでスキーを履くのが快適だ。林道から氷瀑が眺められ、なかなか期待を抱かせる。登山口から細ヒドコースのブナ林を気持ちよくハイクアップして北西壁の基部に行く。氷瀑は傾斜がゆるく、べっとり雪がついて美しさに欠けており、冴えない感じは否定できない。しかし志津倉山にあって、洗練されていない田舎っぽい氷瀑だからこそ登りに来る価値があるというものだ。氷瀑は2段で、下部、上部ともにさしたる難しさは無い。静かな会津の山奥でカチカチと氷を叩いて登る。これだけで満ち足りる。取付きから3Pで氷瀑を登り終えると、なんとも心地よい気分だ。山頂まで足を延ばせば一層充実した山登りになるだろう。 林道より氷瀑を眺める ブナ林 下部氷瀑 中間雪原 上部氷瀑

鬼が面山 只見沢 肩ノ沢右俣

イメージ
オニガツラ東面の沢の中で、初めに遡行したい沢が前岳に突き上げる肩の沢右俣だ。肩の沢右俣は技術的な難易度が容易であることに加え、只見沢の最奥の支流にあたるので、オニガツラの概念を把握するのに最も適している。 只見沢登山口より只見沢を遡行する。マンモス台地からみるオニガツラは何度見ようが息を呑む光景だ。ガスに巻かれて不気味さが一層際立っている。三俣を右俣に入り、肩の沢左俣の針峰群を見送り肩の沢右俣に入る。水がぼ流れていないガレた沢を登っていくと、側壁が立ってくる。CS4mを越えて、伏流したガレ場をひと登りすると、チョックストーンが連続する。最奥のCS滝には古のハーケンが残っていた。どのチョックストーンも難しい登りは強いられない。階段状の枯滝を越えていくと、前岳直下の岩壁にぶつかる。あえて登るものでもないので、藪に入り前岳近くの登山道に出る。 奥壁針峰群 肩の沢右俣 最初のチョックストーン 伏流する チョックストーン連続 ホールド豊富で登りやすい 古のハーケン 枯ナメ 枯滝 振り返るとワルイシ尾根 前岳直下の岩壁 登山道

毛猛山 黒又川 中岩沢 中ノ沢

イメージ
毛猛山一帯の地形図を見ていると、自然と目尻は下がり口角は上がってくる。過密な等高線と蛇行した水線が記される地形図は、眺めるだけでも目眩がしてしまいそうだ。登山道はほぼ無く、黒又川ダムと鉄壁の藪の要塞に立ち塞がれた山塊は伏魔殿と呼んでも差し支えないだろう。そんな毛猛の中でもひときわ存在感を放っているのは黒又川中岩沢だ。アプローチが難しい立地環境に加え、核心部と思わしき場所は息が詰まりそうな閉塞感を醸し出している。地形図上に刻まれた苛烈な皺は、この目で実際に覗きに行かねばならない。中岩沢には西ノ沢、中ノ沢、東ノ沢とありどれも興味深いが、毛猛山にダイレクトに登り詰める中ノ沢に潜り込むことにしよう。 中岩沢は入渓するにも一苦労だ。黒又川第2ダムのバックウォーターまで比較的労せず行くならば、先人にならいキンカ沢から上の大沢を辿るのが容易そうだ。 上の大沢から黒又川に合流する。夜半から朝までかなり雨が降っていたため、水量が心配だったがバックウォーターの水位は低いようだ。ウォーミングアップにもならない泳ぎで中岩沢へ入る。中岩沢の方は出合いからゴルジュ地形で暖気は十分な様子だ。釜を持つ4m滝を越え少しすると沢は穏やかになる。東の沢出合までは大きな滝はなく、小泳ぎを交えながらワンパク水遊びといった具合である。東ノ沢を越えると渓相もアダルティな雰囲気を増してくる。水量や滝の規模こそ大層ではないものの、巻いたり泳いだり登ったりと地味ながらも忙しい。20m滝を越るとようやく中ノ沢の出合いである。 中ノ沢に入るとすぐに7m滝、4m滝と続く。2段12m滝を巻くと地形図に記載のある滝マークの20m滝だ。均整の取れた美瀑で、光が差して気高い雰囲気を醸す。直登は厳しいので左岸から巻くが割合やさしく小さく巻ける。沢はつかの間おだやかさを見せるが、すぐにゴルジュ地形となり、手頃な5m前後の滝がいくつも続く。登れそうな12m滝は右岸から巻いたが思いのほか悪い。小滝の連瀑が終わると沢が少し開け奥にも滝が続く20m滝を迎える。中ノ沢の陰湿な滝ばかりと対峙してきたので、優美なその姿が眩しく写る。登攀も極めて清々しいもので、中ノ沢随一の滝登りが楽しめる。3連の大滝を登ってもなお、滝の量と質の勢いは衰えない。10m以下の滝をいくつも登らされることになる。左俣を見送り右俣に入る。水量が減りスケール感も小さくなるが3~...