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鬼が面山 只見沢 角ノ沢

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オニガツラ角シリーズ(鬼ノ角、角ルンゼ、角ノ沢、角次沢)の一角をなす角ノ沢は、奥壁に屹立する鬼ノ角と奥壁針峰群の間を流れる沢である。角ノ沢は只見尾根から眺めると開放的で、オニガツラにしては明朗な雰囲気を見せている。 只見沢を三俣まで遡行する。中俣に入り次の二俣を右に入ると角ノ沢だ。2段6m滝、4m滝を越えると沢は開けて二俣となる。右俣には2段15m滝がかかる。左俣はさらに二分するがどちらも貧相な雰囲気だ。右俣の滝はスタンスが豊富で割に登りやすい。続く礫の豊富な30mスラブ滝も、ボルダリングジムのスラブ課題のような礫をホールドに快適に登る。先程の左俣上部が見えるが、泥壁風でいかにも悪そうだ。沢幅が狭くなり、左俣と右俣との間は鶏冠のような尾根に分断される。なけなしの水流がある5m前後の滝をいくつか登ると、ボサボサのスラブとなる。沢型を詰めると登山道に飛び出す。  

会津朝日岳 黒谷川 小幽沢

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会津朝日岳に登山道が無かった半世紀ほど前、山頂への登路として登られていたのが小幽沢である。朝日岳について館報只見にはこのような記載がある。「この山には浅草岳にある様な登山路は一本もなく、さらに登山ルートに至るまでの距離は長い。しかし、浅草岳の人をひきつけるものがその豊富な変化の調和であるとしたら、この山のそれは、暗く深い奥会津の山波の中にあって、独り天空を割合する岩の魅力であろう。」幽谷を登りつめてたどり着いた、かつての森閑とした会津朝日岳の山頂はさぞ忘れがたい場所だったに違いない。 黒谷林道から、小幽沢に入ると早速メジロアブの愛の接吻を受ける。南会津の夏だ。堰堤を越えた先の右岸にはサワグルミの巨木がある。両岸をサワグルミに覆われた薄暗い渓の中ではイワナが悠々と泳ぐ。やがて森にはブナが混じりはじめ、泊まりたくなるような河原を見せてくれる。沢が開けると正面には朝日岳の鋸刃の稜線が姿を現す。連続する小滝を登っていくと、小餅葉沢と朝日沢を分ける二俣につく。朝日沢は3段15mほどの滝をはじめ5m以下の小滝をいくつか抱えているが、どれも難しいものはない。想像より早く伏流したが、少し登るとまた細い水流が戻る。詰めの二俣を間違え鋸刃へ直登してしまった。鋸刃の岩場にはニッコウキスゲが鮮やかに咲いている。稜線を少しの藪漕ぎで朝日岳の山頂だ。 昨今の沢登りの感覚で言うならば、簡単で何もない渓という評価になるかもしれない。裏を返すと、装備や情報が限られていた半世紀前において深く険しい会津朝日岳の山頂に行くための合理的な道だったということである。かつての登山者はあの森の中で一夜を明かし、山の恵みを受けながら小幽沢を辿っていったのだろう。かつての登山者たちが見た豊潤な森は、現代でも変わらずそこにあった。

笠堀川 大川 大ブナ沢

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下田の渓で最も温厚な性格を思わせる渓を考えてみると大ブナ沢がその筆頭ではないだろうか。大ブナ沢は大川の最奥の支流にあたり静かで豊かな森を想像させる。「ブナ」を冠する大ブナ沢に惹かれるのはブナ林愛好家として抗いようがない。登山の動機とは実に単純なのだ。大川はその他にも矢筈岳に突き上げる支流を抱え、好奇心がくすぐられる渓である。 笠堀湖の湖岸道は不明瞭である。藪を歩き続けると消耗するので、湖岸際を歩いたり泳いだりしてサクサクと進みたい。バックウォーターまで来ると、キョロロロロとアカショウビンの声で歓迎をうける。ワシガ沢出合まではゴルジュ地形が続く。側壁はオオバギボウシの花が盛りで華やかだ。沢の水量は多く泳ぎながら遡行していくが朝は気温が上がらず水温も低いので体温が奪われる。それでもキレイな渓を前に、紫みがかった唇でニッコリはにかんでしまう。 小又沢を見送ると雪渓が現れる。割合安定しているのが足早に抜ける。ヤナガシュク沢出合から上矢筈沢出合までは、沢は開けて明るい渓相だ。上矢筈沢出合からは少し小滝が続くが、苦労はない。沢はだんだんとブナとミズナラの癒しの森に包まれていく。巨岩帯を抜け左から東又沢が流入するので右の大ブナ沢に入る。するとすぐに左岸に岩壁が屹立する。中でも一際目立つピナクル岩塔には興奮を隠せない。地形図に載らない現地でのサプライズプレゼントだ。尚もブナ林は続き、奥に進むと20mほどの魚止めの滝が現れ、右壁から登る。沢の水量はぐっと減り小滝が連続する。柱状節理も時折見られ遡行を飽きさせない。本流を詰めたい所だが、下降の都合p948に上がる沢に入る。早々に水が枯れてしまい藪漕ぎとなる。標高を上げてブナ林に入ると、スッキリして歩きやすくなった。そこには樹高25m、胸高直径1.5mほどで200歳は優に越えているであろう老齢のブナの巨木があった。このブナは下田の森での数百年の生涯に幕を閉じようとしている。世代交代の時を前に出会えてよかった。人の一生は短く、二度訪れる渓はそうそう無い。自身が老齢を迎えたその時、望むらくはもう一度このブナ林を見つめたいものだ。

佐梨川 金山沢奥壁 第五スラブ

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越後スラブの一等星といえば金山沢奥壁で間違いない。幾多の岳人の心を惹きつけて、憧れの対象であり続けてきた岩壁だ。金山沢奥壁は大きく、第一から第五スラブに分けられる。第五スラブは奥壁の最も右に位置し、郡界尾根に突き上げている。近年登られた記録は見当たらず、その理由も定かではない。大系には岩は脆い、フェースはアンサウンド、岩もすこぶる軟弱などと穏やかではない記述が見られる。金山沢奥壁第五スラブは登れるのだろうか。再びサナシへ向かう。 駒の湯から林道を歩き、家ノ串尾根に取り付く。山の神からは高度感のある鉱山道を辿り金山台地へ行く。薄ら明るくなる頃、金山沢奥壁の全貌が見え始めると否応なしに登攀意欲が掻き立てられる。台地から金山沢の雪渓に降り立ち、第五スラブの取付きまで少し雪渓を下る。懸念点のシュルンドはあるものの、壁に乗り移れそうで一安心。壁の傾斜は緩く、一見するとⅢ級のスラブなので楽勝ムードで登り出すが、やや外傾ぎみのスタンスに石や雪渓カスが乗っており緊張感がある。早めにロープを結ぶのが吉だろう。以降、水流を脇目にⅢ~Ⅳ級の爽快なスラブを10Pほど駆け登る。支点は取りづらいが岩は固く、快適にスラブの海原を堪能する。ビクトリアフェースを回り込むと、ハングした大滝にぶつかる。我々の力量ではとても登ることは考えられないので、第五リッジに移り木登り3Pで大滝上部に抜ける。沢型を素直に辿ると稜線直下の雪渓に辿り着く。雪渓脇の春植物を楽しんで郡界尾根に上がる。郡界尾根は景色が楽しめる気持ちの良い藪漕ぎだ。オツルミズ沢に降りて越後駒ケ岳の山頂まで登るのが良いだろう。 第五スラブは、水流をまとったスラブの登行から藪漕ぎ、そして沢の雪渓を辿って山頂に至るというルートの性質上、クライミングというより沢登りのようだ。一千万人のスラブ愛好家のひとりとして、確かな満足感があった。それだけに、第五スラブがあまり登られていないのが不思議である。公開されている情報の少なさや、他のスラブに足が向いてしまうからなのだろうか。はたまた困難な登攀ではないことも、あまり登られていない理由のひとつかもしれない。金山沢奥壁にして陰気でなく明朗な気持ちで登れる好ルートであった。 金山沢奥壁 水流ある第五スラブ 金山沢を覆う雪渓 第五スラブ取付き シュルンド スラブの海原 Ⅲ~Ⅳ ビクトリアフェースの裏へ 沢登り 大滝 ...