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只見川 倉前沢

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倉前沢は旧田子倉駅付近から眺めると、一条の滝が流れ落ちる様子が確認できて気になる存在である。しかし漂う出オチの雰囲気から足を運ぶ機会を逃していた。秋雨の降り続くこの頃、遡行の機運が突然高まった。 国道252から適当に沢に降りる。国道から見える滝の事しか頭に無かったが、控えめナメにさらりと迎えられ気持ちが和らぐ。少し歩くと2段10m、6m、10mと連爆帯だ。取りつきには残地ハーケンがあった。ガバが豊富で爽やかに水流沿いを登ることができる。柱状節理の岩壁から流れ落ちる10m滝も灌木が近いので、難易度を自由に選べるライン取りが可能だ。登りきると、渓相は一転して、しっぽり森の中を流れるゆるい雰囲気となる。良い滝だったね、なんて話しているとすぐに良い感じの8mナメ滝が登場する。滝上はまたこじんまりとしたナメ床になり、キャッキャ盛り上がる。すると先には見事な18mの大滝が流れ落ち、今度は顔がほころんでしまう。ここを高巻けと言わんばかりの親切な藪を伝い、滝を巻き上がると、ブナ林が広がりご機嫌ハイク。小粒ながらも変化に富んで遡行者を飽きさせない。最後にもう一丁、倉前沢からのギフト20mのナメ滝をペタペタ堪能すると、烏帽子岳付近のブナ林に詰め上がる。 侮っていた。ナメ、滝登り、高巻き、ブナ林、フレンドリー藪漕ぎ、絶妙なバランスで配置され、行程全てに無駄がない優秀な渓であった。沢登りシーズンを終えた晩秋、晴れた日にのんびり訪れれば、きっと心和むことだろう。  

浅草岳 幽の倉沢 裏の沢

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浅草岳南面の沢を代表する裏の沢は、浅草岳を源とし、只見尾根からもその姿を望める。夏までは喉の部分に雪渓が詰まり、雪渓が消えた秋には黒い壁を白く輝く一条の滝が貫く。 只見沢登山口から歩き幽の倉沢へ入る。河原歩き少々で裏の沢出合いだ。小滝をいくつか越えていくと奥に浅草岳を望む。ゴーロを歩き、白い岩盤の慎ましいナメが続き、小滝を越えるとCS5m滝が落ちる。沢幅が狭まりはじめ、3連の小滝を越えると2条に落ちる2段15m滝が現れる。粛然と流れ落ちる様はじつに淑やかである。この滝は只見尾根からも見える喉の部分の滝である。左壁から登り落ち口にむけてトラバースをする。水量少ないゴルジュの小滝を登っていくと小悪そうな10m滝だ。丁度良いクラックは、ジャミングが気持ち良い。続くCS4mは大の字突っ張りが有効だ。2段12m滝を右岸から巻くと10m以下のスラブ滝が続く。ホールドは細かめだが豊富で、さながらスラブ道場のようだ。難しくは無いが丁寧に登る必要がある。滝もだんだん水量は僅かとなり、ボサボサになってくる。振り返るとレークビューが景色に花を添えている。12m程の岩壁にぶつかるが弱点をついて登れば苦労はない。ボサをひと登りすると山頂直下の草原に抜ける。 遠目に見る裏の沢は、岩盤が露出している場所が多く、どことなく悪そうな雰囲気を感じさせていた。しかし実際に遡行してみると、晴れやかな印象が強い。南面の沢で日当たり良好で明るく、それ程の悪い登りは無い。詰めあげる浅草岳はいつも温かく迎えてくれるのだ。只見尾根を下りながら見た裏の沢は、いつもよりまるい表情を見せていた。  

飯豊山 玉川 大又沢 御秘所沢

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春のダイグラ尾根を降りきると、雪代で大水量の大又沢と桧山沢の合流点に着く。この時期はつり橋が架かっていないので、温見平へ向かうためには、ワイルドな徒渉を強いられる。豪快な両沢の入り口を見て、その奥が気にならずにいられないのは、細々とでも沢登りを嗜む者の性であろうか。 玉川の源流は、飯豊山の北側の登山道であるダイグラ尾根に二分され、大又沢と桧山沢に別れる。地形図上では、ゆらゆらと長大に大又沢が流れ、俄然その中身に興味が湧いてくる。 飯豊山荘よりダイグラ尾根吊り橋まで林道を行く。大又沢は荒っぽい春の姿から一転し、深い森へ続く入口のように見える。時おりへつったり泳いだりしながらゴーロを歩く。顕著な小岩塔を過ぎるとゴルジュとなり、出口に7m滝が懸かる。左岸から巻くと、すぐに爆水の10m滝だ。左壁はうす被りで少し苦労しそうだ。右岸から簡単に巻き沢に復帰する。再びゴルジュとなり、奥の4m滝を左壁からトラバースして越え、続く5m滝を巻く。続くゴルジュは威圧感はないが、小滝は登れず小さな高巻きを交え進む。下流部ゴルジュ帯は白い岩盤に森と水の緑が映え豊かな気持ちになろう。入りミズキ沢手前には良い幕営地がある。入りミズキ沢から本社ノ沢までは5m以下の滝がいくつか出てくるが、登るも巻くも苦労はない。3段20mナメ滝を越えると、しばらく平凡な様相が続き、8mほどの滝が2つ現れるが、慣れていればロープは不要であろう。やがて沢はチョックストーンの小滝を連ねるゴルジュとなり出口には12mCS滝が落ちる。小さく高巻き少し歩くと御秘所沢出合だ。10m滝を越えると渓相は穏やかな表情を見せ、両岸のお花畑とささやかなナメに迎えられ、頬がゆるむ。源頭は草原で藪漕ぎはない。やさしさに包まれたなら稜線はすぐそこだ。 南会津の山から散々見てきた飯豊の山にいる。飯豊の森もまた豊かだった。語れるほど飯豊のことを知らないが今はそれで良い。飯豊はこれからの山なのだから。  

乙妻山 裾花川 地獄谷

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沢登りで思わずニッコリ笑みが溢れる瞬間といえば、ナメ歩きのひとときであることに異論はなかろう。美しいナメは人の心を浄化し、俗世から解放する。 裾花川は高妻山を源流にした長大な谷である。大系には、「これらの沢はさして険悪なゴルジュがあるわけでもなく、極端に難しい大滝を懸けているわけでもないが、その美しいナメや淵は、この辺りに伝わる古い伝説を彩りにして、訪れる遡行者に静かな満足感を与えてくれる。」とある。禍々しい岩壁を従えた戸隠の懐にそのような桃源郷があるなんてにわかに信じがたい。 奥裾花ダムから林道をしばらく歩き裾花川に入る。本流の遡行はしばらく穏やかだ。やがて沢幅が狭まりゴルジュとなる。軽く泳いで越えると6m滝が落ち込む地獄谷出合だ。右壁から登るとすぐに、滝が2つ続く。岩は少し脆いので慎重に登りたい。滝を越えると沢は穏やかになりナメが現れる。ナメはどこまでも続き、思わず踊り出したくなるほどの美しさだ。8m滝を越え、途中の倒木帯を抜けると森が近いナメの小路が続く。10m滝を越えると、地形図の滝マークのある二俣だ。左俣に入るとすぐに2段30m滝が落ち込む。スイートなナメに浮かれ舐めて右壁から取りつくと、思いの外悪い登りを強いられる辛口の滝だった。水流が細くなりガレっぽい沢を登っていく。水流が枯れ、二俣を左に入るとスラブが突如現れる。ウロコ状のスラブはフリクションがよくすこぶる快適だ。名残惜しく登りきると、藪漕ぎ少しで乙妻山山頂だ。 地獄谷は訪れる遡行者に静かに、否、大いに満足感を与えてくれる甘美な渓である。メローなナメをご堪能あれ。