オニガツラには「マンモス尾根」「ニードルルンゼ」「角ルンゼ」と、男心と好奇心がくすぐられる名のついたルートがいくつか存在する。角ルンゼは、鬼ノ角のピークに陰険に切れ込み、遠くからもその存在感を放っている。
只見沢を遡行して乗越沢の大滝手前まで行く。角ルンゼの取り付きは分かり辛いが、乗越沢大滝手前の側壁っぽいのが角ルンゼの入口だ。出だしはやや傾斜を感じるがホールドは豊富で登りやすい。念の為ロープを出し2ピッチ登ると平坦になる。少し歩くと6m程の岩壁にぶつかる。ここはブッシュを交えて登る。登り切った所に腐りきった古のハーケンが1本あった。ルート内で唯一見つけた残置物である。赤みを帯びたスッキリしない枯滝を藪を掴み登る。藪から抜け視界が開けてくると、末広がりのスラブが展開される。藪茂るスラブの斜度は緩くとも、両側は岩壁がせり上がり物々しい雰囲気だ。下部の緩傾斜スラブを、登りやすそうな左側から登り始める。スラブが狭まってくる中間部に差し掛かり、段差を越える部分から傾斜が強くなってきたのロープを出す。Ⅳ級を超えない登りではあるが、リスは殆ど無く中間支点はあまり期待できないので緊張感がある。2ピッチ登るとスラブは藪に消えたのでロープをしまう。藪を掴みルンゼ状を素直に詰める。稜線直下の垂直藪漕ぎも厳しい想定でロープを出したが、うまい具合に登路が繋がっていたので苦労せず稜線に抜けることができた。夕刻迫る中、来し方を振り返ると田子倉湖が西日に照らされ輝いていた。
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