金山沢奥壁 第五スラブ


越後スラブの一等星といえば金山沢奥壁で間違いない。幾多の岳人の心を惹きつけて、憧れの対象であり続けてきた岩壁だ。金山沢奥壁は大きく、第一から第五スラブに分けられる。第五スラブは奥壁の最も右に位置し、郡界尾根に突き上げている。近年登られた記録は見当たらず、その理由も定かではない。大系には岩は脆い、フェースはアンサウンド、岩もすこぶる軟弱などと穏やかではない記述が見られる。金山沢奥壁第五スラブは登れるのだろうか。再びサナシへ向かう。

駒の湯から林道を歩き、家ノ串尾根に取り付く。山の神からは高度感のある鉱山道を辿り金山台地へ行く。薄ら明るくなる頃、金山沢奥壁の全貌が見え始めると否応なしに登攀意欲が掻き立てられる。台地から金山沢の雪渓に降り立ち、第五スラブの取付きまで少し雪渓を下る。懸念点のシュルンドはあるものの、壁に乗り移れそうで一安心。壁の傾斜は緩く、一見するとⅢ級のスラブなので楽勝ムードで登り出すが、やや外傾ぎみのスタンスに石や雪渓カスが乗っており緊張感がある。早めにロープを結ぶのが吉だろう。以降、水流を脇目にⅢ~Ⅳ級の爽快なスラブを10Pほど駆け登る。支点は取りづらいが岩は固く、快適にスラブの海原を堪能する。ビクトリアフェースを回り込むと、ハングした大滝にぶつかる。我々の力量ではとても登ることは考えられないので、第五リッジに移り木登り3Pで大滝上部に抜ける。沢型を素直に辿ると稜線直下の雪渓に辿り着く。雪渓脇の春植物を楽しんで郡界尾根に上がる。郡界尾根は景色が楽しめる気持ちの良い藪漕ぎだ。オツルミズ沢に降りて越後駒ケ岳の山頂まで登るのが良いだろう。

第五スラブは、水流をまとったスラブの登行から藪漕ぎ、そして沢の雪渓を辿って山頂に至るというルートの性質上、クライミングというより沢登りのようだ。一千万人のスラブ愛好家のひとりとして、確かな満足感があった。それだけに、第五スラブがあまり登られていないのが不思議である。公開されている情報の少なさや、他のスラブに足が向いてしまうからなのだろうか。はたまた困難な登攀ではないことも、あまり登られていない理由のひとつかもしれない。金山沢奥壁にして陰気でなく明朗な気持ちで登れる好ルートであった。

金山沢奥壁

水流ある第五スラブ

金山沢を覆う雪渓

第五スラブ取付き

シュルンド

スラブの海原

Ⅲ~Ⅳ

ビクトリアフェースの裏へ

沢登り

大滝

稜線直下の雪渓

郡界尾根

 

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