志津倉山に伝わる伝承の一部を三島町史から紹介しよう。
山には古来から狗ひん様(天狗)が住んでおり、山奥で時々「空木返し」が起こる。空木返しとは、大木が倒れる音や、大石が転がる轟音が聞こえることである。空木返しが起きた後に山に行ってもなんの形跡もないという。狗ひん様の悪口を言えば、それがさらにひどくなると云われている。
猫啼き岩には、千年の歳を重ねた妖怪かしゃ猫が住む。かしゃ猫は人を喰うと恐れられている。また葬式の時に死人をさらうとも言われ、村人は葬式を真夜中にこっそり済ませるそうだ。
屏風岩には「父の胎」と「内母の胎内」と呼ばれる洞窟があり、中に入ると廃人になると云われている。
雨乞い岩にも伝承がある。晴天続きの時に雨乞い岩に祭壇を設け、締め縄を張り、村人が集まって鐘と太鼓をたたいて「雨たんめいたいしゃくやい水たんもれ龍宮やい」と祈ると雨が降ると伝えられている。
ー 三島町史 ー
さて、大沢コースから少し歩くと正面に見える、どっしり構えたスラブが雨乞い岩だ。沢の方へ下降するとすぐに雨乞い岩の基部に着く。雨乞い岩の構成は下部スラブ、中間テラス、上部スラブとなっている。下部スラブは傾斜がかなり緩く駆け上がることができるほどだ。右手の立派なフェース状の岩壁には、ボルトが幾つか散見された。かつて地元岳人のゲレンデだったのだろうか。テラスより上部は二俣となっており、下部より傾斜が強くなる。右俣は奥で更に傾斜を増して尾根に吸収される。左俣の左のスラブを登ると、奥でさらに二俣となる。どちらもそれほど傾斜は強くない。右股に入り紅葉を目下に快適なスラブを登りきると、あとは藪漕ぎ少々で山頂だ。志津倉山の登山道にいる巨木三兄弟の、ブナのブナ志津男、トチノキの栃太(ふとし)くん、サワグルミの沢クルミちゃんも見所だ。たまには肩の力を抜いて、伝承や歴史を肴に里山登山を楽しみたい。素晴らしき哉、晩秋スラブ。
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雨乞い岩
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雨乞い岩基部
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下部はゆるい傾斜
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ボルトが打たれている
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右俣の奥
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下部スラブを見下ろす
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上部は傾斜が増す
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左俣の左
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左俣左の奥の二俣の右
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立派なブナが目立つ
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栃太(ふとし)くん
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沢クルミちゃん |
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